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胸をえぐられる漫画『ちーちゃんはちょっと足りない』感想

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ちーちゃんはちょっと足りない

阿部共実の『ちーちゃんはちょっと足りない』を読みました。

ちーちゃんが主人公かと思いきや、真の主人公はその友だちのナツでした。

『ちーちゃんはちょっと足りない』の内容

明るい日常漫画のような始まり

ちーちゃんには、友だちが2人います。

同じ団地に住んでいる幼馴染の「ナツ」と、勉強ができるメガネをかけた「旭」です。

そして、片思いの相手で勉強を見てくれる「奥島」がいます。

また、喧嘩はするものの仲の良い姉の「志絵」がいます。

これだけ見ると、ちーちゃんがわりと恵まれていることがわかるかと思います。

ちーちゃんはちょっと足りないけど、基本的に良い子であり、みんなから好かれています。

ボケがちーちゃん、ツッコミがナツと旭という感じです。

4話までは、どこにでもありそうなほのぼの日常漫画なんですよね。

「お金がなくなったこと」がきっかけで事件は起きる

ちーちゃんのクラスメイトには、藤岡というヤンキーっぽい女子生徒がいます。

彼女は女子バスケ部に幽霊部員として所属しています。

ある日、女子バスケの担任の誕生日を祝うためお金を集めることになりました。

教室で「全部で3000円くらいか」とやり取りする藤岡たちに対して、旭は「学校で金のやりとりするとトラブルのもとだぞ」と注意します。

そして、本当に3000円がなくなるんです。

ここから安倍共実の真骨頂ですね。

ネタバレあり「あらすじ」

3000円を盗んだ犯人

藤岡たちから3000円を盗んだのは、ちーちゃんでした。

ちーちゃんは3000円のうち1000円をナツにあげます。

ナツは1000円を受け取り、「2人だけの秘密だよ」と言います。

ナツの欲しがっていたリボン

ナツは5000円のリボンを欲しがっていました。

5000円のリボンがあれば、みんなから注目されて自分が満たされると思っていたのです。

しかし貧乏な家に生まれたナツにはお金がありません。

お小遣いを前借りしたものの、それでも1000円が足りない状況でした。

そこにちーちゃんが3000円をもって、現れたのです。

ナツは瞬時にそれが盗まれた3000円だとわかりました。

しかし、受け取ってしまったのです。

貧乏は罪なの?

翌日、ナツは仮病を使って学校を休みます。

「子供のとき欲しかったお土産を買ってもらえなかった」ことを思い出し、「私だってたまには好きなものくらい買ってもいいでしょう?」と、リボンを買いに行きます。

欲しかったリボンを手に入れてウキウキのナツを待っていたのは、見舞いにきていたちーちゃんでした。

ナツはちーちゃんと遊びながら、「ちょっとくらい恵まれてもいいでしょ」と思うのでした。

リボンをつけて登校

翌日、ナツは休もうとするものの、リボンを見て考えを改め登校します。

「リボンをつけた姿を見て、みんなの注目が集まったらどうしよう?」と期待と不安を織り交ぜながら教室のドアを開けるナツ。

しかし、クラスメイトはおろか友だちの旭もリボンのことを触れなかったのです。

藤岡が現れて「お金が盗まれたみたいだわ」と、ちーちゃんたちに告げます。

「バレたらどうしよう」と、ナツは気分が悪く保健室へ行きます。

とった

「あいつらのお金なんて知らねーよな」という旭に対して、ちーちゃんは「とった」と正直に言ってしまいます。

旭はちーちゃんを連れていき、藤岡たちの前で思いっきり謝ります。

「返せ」という旭でしたが、ちーちゃんは2000円しか持っていません。

残りの1000円については誰にあげたか言いませんでした。

泣いて謝るちーちゃんに対して、藤岡は少しだけ脅すもののすぐ許してあげます。

藤岡は「ちょっと足りなくたって、どうだって楽しんで生きていけるだろ」と諭すのでした。

ちーちゃんはすっかり藤岡に心を許します。

旭も謝り、彼らは仲良くなるのでした。

ちーちゃんが行方不明

ナツは保健室からの帰り、帰宅途中の旭とちーちゃんに出会います。

旭の態度から「お金を盗ったことがバレた」と、ナツは悟ります。

「ちーちゃんが裏切った」と勘違いしたナツは、一人で帰ります。

休日、ひとりぼっちになったナツに電話がかかります。

ちーちゃんの姉である志絵からでした。

「ちーちゃんが行方不明になった」と連絡を受けたナツは、面倒くさいと思いながらもちーちゃんを探すのを手伝うことにするのでした。

「私はクズだ」と落ち込みながら歩道橋にいたナツは、ちーちゃんに見つけてもらいます。

ちーちゃんが嬉しそうに近づいてくるのを見て、涙がとまらなくなるナツ。

「私たちずっと友だちだよね?」と聞くナツに、ちーちゃんは「うん」と答えるのでした。

ネタバレあり感想

ナツに対して思うこと

この漫画には、頑張って生きている人が多く登場しています。

志絵はちーちゃんにゲーム機を買ってあげるためバイトや勉強を頑張っているし、藤岡は幼い兄弟と介護のため部活にも行けず頑張っています。

奥島は遅くまでちーちゃんの勉強を見てくれるし、旭は「ちーちゃんが盗んだんじゃないの?」と言われたとき友人のために本気で怒りました。

その中でナツは自分のことしか考えていません。

最初から最後まで自分のことしか考えていません。

第8話でちーちゃんを探しながら内省しているナツは、自分を否定するもののお金を盗られた藤岡たちの気持ちは一切考えていません。

自己愛に振り回されているクズです。

だけど、私はナツのことを最低の人間だとは思えません。

なぜなら私もナツ側だからです。

だから、正直読んでいてかなり辛かったです。

ハッピーエンドじゃない

最終話のちーちゃんとナツにはすれ違いが起きています。

ナツは、「こんな私でも友だちでいてくれる」と思いながら、ちーちゃんを見ています。

しかし、ちーちゃんはナツがどんな思いを抱えているのか知りません。

藤岡たちと仲良くなったちーちゃんは、普通に藤岡の家にゲームをしにいくことでしょう。

ちーちゃんが勉強で困ったら奥島たちは助けてくれるでしょう。

だけど、そこにナツは入れません。

ちーちゃんと藤岡のやり取りを知っている奥島は、1000円を盗ったのはナツだと口にはしないもののわかっているはずです。

他人の表情に敏感なナツは、すぐにそのことを感づくはずです。

この物語の終わりとなっている第8話では、ナツはまだちーちゃんと旭としか対峙していません。

ちーちゃんが他の友だちと楽しそうにしているとき、ナツが耐えられるとは思えないのです。

まとめ

『ちーちゃんはちょっと足りない』は、ナツのことがわかる人間にとっては胸がえぐられる話でした。

逆にナツがわからない人は、旭のような気持ちでナツを見るのだと思います。

ここまで人間が持っている醜さを描けるのは、すごいですね。

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